ファッションビル研究所

2004年12月15日(水曜日) #050.人は安い物に慣れ易く、高い物に慣れ難い

1990円のフリースが高いと思える社会は、ある種悲劇である。
ユニクロ定番商品のフリースを買いに近所の店舗へ出かけた。フルジップとハーフジップのフリース、それぞれ790円で購入した。
1着当り平均的な昼食代で買えてしまう。790円のフリースを大量に物色した後、1990円の新素材フリース(アウトラスト)が異常に高く感じてしまった。この感覚の異常さを覚えたのはユニクロに出会ってからだ。ユニクロを実際に今まで羽織って性能の高さを知っているから更にこの異常さが際立つ。
今回のコラムのタイトルは正にデフレスパイラルに拍車を掛ける”人の性質”の一つである。
店内を歩いている時に率直に思った。1990円のフリースは売れるのだろうか・・・。筆者はユニクロのフリース愛用し、その性能も知っている。一消費者であり、その視点で考えてみると、790円のフリースで、もはや性能の飽和状態を迎えているのではないかと思えるほど機能性が高い。ここ数年、このフリースのお陰で冬場に羽織る枚数が確実に一枚減った。
この点ユニクロの一般社会への貢献度は非常に高いし、素直に賞賛に値すると考える。
世の中には”知らぬが華”という事が多々ある。
近年、あらゆる分野での情報開示、聖域の打破によって原価が一般人に知れ渡ってきている。その代表例はメガネ業界だろう。ここ数年でメガネの単価は驚くほど下がってきている。この事はある種喜ばしい事で、自由経済、資本主義社会の恩恵でもある。
もし、ユニクロの最安のフリースが1990円だったとしたらどうだろうか。1990円だったとしてもフリースとしては安い。消費者は普通に喜ぶだろう、790円のフリースを知らなかったら・・・。何が言いたいのかというと、1990円から比べると790円は半分以下だから、幸福感も倍なのかと考えると必ずしもそうではないと言う事である。正に”知らぬが華”現象。
この現象が他の業界でもどんどん噴出してきて、単に安さで幸福感を覚える事が近年一気に少なくなった気がする。
話は少々スケールが大きくなるが、平和の大切さを語る老人の気持ちが少し分かる気がする。余りに当たり前で浸透して慣れてしまった事象が、実は一番危険な事だと。
790円のフリースをフツーに安いと思ってはいけない。”気持ち悪いほど安い”ぐらいに思っておかなければならない。
デフレが終焉した時の事を考えて・・・